離婚後の親子関係
目次
子供の不安に答えてあげる
両親が離婚すると子どもは”自分は今後どうなるんだろう?”と心配するようになります。「食事は誰が用意してくれるの?」「どこで寝るの?」「どうやって学校に行くの?」「離れて暮らす親とはいつ会えるの?」といったようなことに子どもたち不安で一杯です。こんなとき、両親はこういった問題に対し、できるだけ早くこの悩みに答えてあげる必要があります。
例えば「食事の心配はないこと」「食事をする場所、寝る場所があること」「・学校へはどうやって行くのかということ」などのように日常生活に関する不安に答えることも大切ですし、「親とはいつでも会えること」といったように面会交流に対する不安を取り除いてあげることも重要です。
そうすることによって子どもは次第に安心感を持つようになります。学校の送り迎えなどの移動方法や、食事を誰が用意するのか、というようなことが子どもには重大な問題なので、離婚をする前にできるだけ方針を取り決めておいた方がいいでしょう。
年長の子どもには、子供自身の交友関係・スポーツ・レジャー活動などについて、最大限その気持ちを尊重することを伝える必要があります。 子どもたちは親が一方的に決めた「離婚」という現実をただ受け容れるしかない、いわば被害者です。
離婚はやむを得ないとしても、子どもたちの気持ちを無視して全てが取り決められたとしたら、子どもは「無視された、放っておかれた」という気持ちから、現実を受け容れることができなくなってしまいます。
子どもの気持ちを尊重しながらその不安に答えることは離婚する両親の最低限の義務と心得てください。
子供には両親双方の愛情が必要
子どもが健全に育つには両親双方の愛情が必要です。子どもたちは両親双方の愛情を受けることによって情緒面の発達が促され、親の愛情によって愛と信頼を学びます。
両親が継続的に関わっていないと、子どもが人間に対する信頼感を築くにあたって問題を生じ、その結果他人とのあたたかい人間関係を築くことが難しくなります。
他人と関係を築こうとする意欲は「他人を信頼感する能力」に立脚してます。子どもは両親双方と関わることによって、物事の見方は一つではない、ということが分かるようになります。
なぜなら、両親はそれぞれ違ったふうに物事を見たり感じたりするからです。 子どもは両親に接し教育されるうちに、自分の愛する二人の人間がそれぞれ異なった物の見方をするということを理解するようにります。
つまり、野球の大ファンでもよいのだし、野球に興味がなくてもよい、というようなことが子どもに分かるようになるのです。
これは子どもが学ぶべき非常に重要な点であり、このように「両親の異なる物の見方」に触れることが、子どもが自分自身の視点を構築する基本となるのです。
離婚をする際には「子どもが健全に育つには両親双方の愛情が必要だ」ということをお互いに確認した上で、面会交流の取り決めをしていきましょう。
離婚後の親族関係に関する取り決め
離婚後の面会交流に関する取り決めの中で「子どもが両親それぞれの親族とどのように関わりを持つか」ということも取り決めておいた方がいいでしょう。
例えば、「祖父母の誕生日に面会日の一つとする」などという取り決め。通常、祖父母は息子または娘に割り当てられた面会日に孫と会うことが多いです。しかし、本来は祖父母も独自に孫と会う機会を要求することができます。
たとえ息子または娘が何らかの事情で面会できない場合(息子や娘が面会を制限されていたり、服役中であったり、子どもに対する興味を喪失しているような場合)でも祖父母は独自に孫と会う機会を要求できるということですね。
両親が離婚した後に親族関係に関する話し合いをするのは困難ですから、必ず離婚する際に細かな点まで話し合って取り決めをしましょう。
子どもの前で悪口を言わない
自尊心とは子どもが自分自身を愛し自信を持つことです。そして子どもは両親から自尊心を学びます。しかし、両親がお互いを尊重していなかったりすると子どもはそれを非常によく理解してしまいます。
子どもはそのような親から、子どものある部分は「愛されたり尊重されたりするに値しない」というメッセージを受け取ってしまいます。すると子どもの自尊心は傷つき、子どもの発達が妨げられてしまいます。
したがって、一方の親が子どもの前で他方の親に対し冷酷または批判的なことを言うと、子どもは深く傷つきます。
他方の親に対する批判の言葉は子供に対する批判でもあり、子供の健全な成育に悪影響を及ぼします。離婚後の子育てや面会交流の中では「子どもには他方の親について悪口を絶対に言わない」のはもちろんのこと、そういった取り決めはできるだけ書面に残しておきましょう。
離婚後の子供の教育方針・躾(しつけ)に関する取り決め
離婚後に親権者となった親の養育方針・教育方針に対し、他方の親は口を出しすぎないようにしましょう。離婚後の子供の監護・養育は親権者が行うべきものですが、これを無視して口を出しすぎると当然争いになります。
例えば、親権者の家庭で子供が「テレビ禁止」の期間中であったとするなら、面会交流を実施する親もその禁止事項を守らなければなりません。もしそうすることに問題があるのであれば、子供のいないところで両親だけで協議する必要があります。
また、面会交流を実施する際に親権を持たない親にどの程度までの躾(しつけ)を許すか、などについてもある程度方針を決めておいた方がいいかもしれません。
躾(しつけ)とは、子どもに確固とした行動上の許容範囲を示すことですが、これはつまり、子供自身に「許される行動」と「許されない行動」を理解させる、ということです。
ただ、両親が同居していない場合、このような教育をするのは難しいでしょう。ほぼ全ての親の躾はそれぞれ違っており、躾の理由も様々です。一般的に言って、子どもは「二つの家庭で物事が違うやり方で行われている」ということを理解することができるということが研究で明らかにされています。
両親の躾(しつけ)に食い違いが出た場合子どもは不平を言うかもしれませんが、それを聞いた親は他方の親がした躾(しつけ)を非難しないよう注意して下さい。
他方の親が行った躾にも理解を示し、まずは当の親に直接話すよう子どもに言い聞かせましょう。
子供の気持ちに配慮したコミュニケーション
両親は離婚すると、面会交流をした子どもに「もう一方の親のことを聞きたい」という衝動に駆られることがよくあります。自分があまりよい暮らし向きではないと、つい子どもにもう一方の親のことを尋ね不幸な点を探し出そうとしがちですが、これは子どもにとって苦痛なことですし、子どもの親に対する忠誠心を揺るがせてしまうことにもなります。
他方の親のことを聞かれた子供は、このような質問をした親に気を遣って真実でないことを言うこともありますが、そうすることによって子どもは自分の清廉潔白さや誠実さに自信が持てなくなる可能性があります。
「他方の親について子供とどのようにコミュニケーションを取るか」は子供の性格を見極めながら、慎重に対応していきましょう。
安心して子どもに面会交流をさせてあげる
両親それぞれの家庭間の「子どもの移動(面会交流)」は安全に実施されなければなりません。 怒りを込めた言葉を聞かせてはならないし、どちらかの親が、子どもが他方の親と共に過ごすことに憤慨していたとしても、それを子どもに気づかせてはなりません。
移動は様々な形で子どもにとって害を与えることがあります。例えばこんな行為は子供にとって非常に有害です。
- 面会交流に行く直前に親が怒っている姿を子どもに見せる
- 面会交流の前後に着替えをさせる
- 面会交流に子供が自分の持ち物を持っていくことを禁じる
面会交流を円滑に実施するため、これを行う両親は子どもが他方の親と会うことに安心感を持てるような工夫をしてあげましょう。
例えば、子供に「両親それぞれがどこに住んでいるのか」「両親がどんな仕事、活動、趣味をしているのか」ということを知らせてあげるのも大切なことです。
また、「子どもといないときも親が幸せに忙しく暮らしている」ということを子どもに伝えなければなりません。一方の親が面会交流に不快感を持っていることを子供が悟ると、子供は概ね親に次のような反応を示します。
- 親をかばう
- 親をなだめる
- 親が聞きたがったり気分が良くなったりするようなことを言おうとする
- 「もう一方の親とは会いたくない」とまで言って親をなだめようとする
このようなことは多くの問題を引き起こします。まずこのような事態を招く親は、子どもの言うことをそのまま信用し「子供も会いたくないと言っている!」などと他方の親に伝えることがあります。
そしてその親は「子どもが望むことをしているのだ」と考えて面会を制限し、その結果親子の面会交流権が妨害されます。
そして両親は子どもについて相反する意見を言い合い口論となる・・・というのが典型的な面会交流権の典型的な問題ですが、非常に重大な虐待や暴力がない限り「子どもはもう一方の親とどうしても会いたい!」と思っているということを常に頭にいれておかなければなりません。
研究によれば「面会交流に際し子どもが一方の親に会いたくないと拒絶を示したり、騒いで嫌がったりする場合、その問題を作っているのは通常大人である」ということが明らかにされています。
子どもが親から「もう一方の親と一緒にいることが嬉しいと思って欲しくない・・・」というメッセージを感じ取ると、子どもの心は引き裂かれ、忠誠心が真っ二つに分裂してしまうような感じになります。
子どもが親から「私を愛しているのなら、お父さん(お母さん)を愛してはいけない」というメッセージを感じ取ると、子どもは「もう一方の親を愛すると見捨てられるのではないか?」という恐怖を感じる可能性があります。 このような強い恐怖を植え付けることにより、子どもは不安定になり学校生活や友人関係において困難を生じやすくなります。
子供との面会交流が問題となる場合は、それに対する対応法を離婚協議に際して取り決めておいた方がいいでしょう。よく採用される方法の一つは「学校で子どもの受け渡しをする」ことです。
これにより家庭から家庭への直接の移動よりも影響が緩和されます。子どもにとって学校はもう一方の親のところへ行くことができる数少ない安全な場所です。
他の方法としては「旧知の協力的な親戚や友だちのところを中継して子どもを移動させる」とか、「専門家に立ち会ってもらう」という方法がありますが、いずれの方法による場合でも、子供が余計な不安を感じずに面会交流が実施できるよう両親は細心の注意を払うよう心掛けていただきたいと思います。
ちなみに、面会交流の際に紛争が発生する場合は、両親に以下のような問題がある場合が多いようです。
- 明確な面会交流の取り決めをしていない
- 面会交流の必要性に関する認識が乏しい
- 子供の気持ちに配慮しない
離婚の最大の被害者は子供です。そして、被害者である子供に安心して面会交流をさせるのは離婚した当事者の責任です。この意味をキチンと理解し、円滑に面会交流を実施していただけることを願ってやみません。